CAT'S EYE(猫の視点)

【THE BIG PARADE 2014】 デジタル時代のヒットチャートとは?

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音楽とテクノロジーの祭典『THE BIG PARADE 2014』 が9月13〜15日にかけての3日間、代官山界隈の複数の会場で開催されました。

最終日となる9月15日13時からDigital Garage社内で開催されたセッション「デジタル時代のヒットチャートとは?」 は、長年低迷し続ける日本の音楽市場への問題意識の高さを反映してか、音楽業界関係者やメディア関係者を中心に200人の席がほぼ埋まるほどの盛況ぶりでした。

登壇者は、シルビオピエトロルオンゴ氏(ビルボード チャートディレクター)、野本晶氏(Spotify Japan株式会社

モデレータは、ジェイ・コウガミ氏(All Digital Music ブロガー)です。


世界最大のストリーミングサーヴィスSpotify

ビルボードは言わずと知れた、音楽のヒットチャートの代名詞ともいえる米国の音楽媒体ですが、Spotifyは日本ではまだサーヴィスインしていないこともあり、国内の知名度はまだあまり高くありません。

現在2000万人を超えるユーザを持つ世界最大手の音楽ストリーミングサーヴィスSpotifyは、早期からCDの売上が落ちて違法ダウンロードコピーが横行してしまった北欧で、カウンター的に興された事業に端を発しています。そのことが現地のラジオ局との連携につながり、ストリーミングサーヴィスが広がる下地となりました。


ビルボードチャートディレクターから見た音楽市場とヒットチャート

シルビオ氏は、今の音楽市場の現状を、アルバムセールスが下落の一途を辿り、その一方でトラックセールス(iTunesなどで曲単位に売ること)やストリーミングサーヴィスが市場を伸ばしていると分析します。

それらを受けてビルボードでは現在、従来のシングルチャートの他、ユーザが投稿するYoutubeの再生回数なども含むストリーミングチャートとソーシャルチャートを発表しています。

※詳細はコウガミさんが以前にブログで解説していました。「Twitter社と米Billboard、ソーシャル上で人気の音楽がリアルタイムで把握できるチャート「Real-Time Charts」を開始」

ストリーミングチャートはユーザの音楽への定量的なリーチを指標とします。購入の有無に関わらず、音楽がユーザにリーチされる頻度や接触の仕方などが解析の対象となります。

一方、ソーシャルチャートはやや定性的な分析の仕方となります。ストリーミングの再生回数などの他、ファンによる、アーティストや楽曲などに対する言及の仕方が解析の対象となります。


ヒットチャートの指標をどこに置くか

野本氏によれば、Spotifyでは本人の周囲にいる人同士で趣味趣向が影響を受け合うことによりチャートが変化するソーシャルチャートをより重視しつつも、従来のシングルチャートも見られるデザインにしているとのことです。また、自分が最近よく聴いた音楽を可視化する「My Ranking」というコーナーもあります。

ストリーミングチャートの指標となる解析の対象は、国によって異なり、たとえば音楽業界の体質が日本と比較的近いといわれているドイツでは、有料のストリーミングサーヴィスのみが対象となり、無料のストリーミングサーヴィスのリーチ数は除外されています。

ジャパンビルボードでは、201312月からTwitterグレースノート社 のデータを合算したチャート「Japan Hot100」を出しています。それまではCDなどのパッケージ販売とiTunes配信、ラジオ局でのオンエアのみが指標でした。しかしシルビオ氏はヒットチャートの指標について、日本ではTSUTAYAなどでレンタルされた楽曲は、数値的には無視できないはずなのにチャートを出す際に解析対象になっていないことを指摘してます。


ヒットチャートがコンテンツにもたらす影響

セッション後半にさしかかり、コウガミ氏は、ヒットチャートがコンテンツに及ぼす影響について質問をします。つまり、チャートのランクインされたことで爆発的なヒットが生まれたり、才能のある新人が発掘されるチャンスがあるのかということについてです。

シルビオ氏は、バイラルによって新人が発掘されてビルボードのトップ10にランクインされた事例について紹介するとともに、アーティストの個性によって見せ方とそれに合うプラットフォームに差異があることについて言及しました。

たとえばインパクトのあるビジュアルや動画演出から楽曲への人気にもつながるなど、ウェブコンテンツへの接触頻度の増加が、ユーザによる音楽の楽しみ方の多様性を生みます。それは同時にアーティストにとってはプラットフォームやサーヴィスを利用するユーザの属性に応じた発表の場や演出を選ぶことが肝要になるということでもあります。

確かなこととして言えるのは、ユーザの反応によるコンテンツの影響力は、チャートの多様性とそれらのブレンドに呼応する形で増しているとのことでした。


音楽マーケティングにおけるビッグデータの活用について

海外においては、ビッグデータを取り入れたマーケット分析が音楽の分野でも取り入れられています。ビルボードはNext Big Sound と契約を結び、SpotifyThe Echo nest を利用しています。

nextbig soundの特色は、アーティストのオンライン・オフラインでの動きをトラッキングしたプラットフォームで、レーベルにとってそのアーティストを、どのような属性のユーザにリーチさせるべきかを解析しています。

一方the econestは、ユーザの動向を解析し、そのユーザが好きになるかもしれない曲をレコメンドするためにビッグデータを活用しています。ジャンルをシームレスにしているのが特色です(たとえばロックを聴いてきたユーザにジャズをレコメンドすることもあるかもしれません)


日本の音楽市場が向かうべき方向

コウガミ氏は日本では「Real-Time Charts」のようなソーシャルチャートもビッグデータもまだ取り入れられていないことに言及しつつ、今後日本のヒットチャートの向かうべき方向について二人に質問をします。

シルビオ氏は、企業によっては全ての情報を透明化したいわけではないかもしれないが、解析自体は進めていくべきで、まずはファンがどのような動きをしていくのかをフォローしていくところから始めるべき。課題はあるが、テクノロジーがそれらを解決していくだろう、とコメントをしました。

野本氏によれば、ユーザの関心を反映させたチャートが人気を持つのは間違いがないということ。これまでも最も影響力のあったのは、リアルな人間関係内の口コミや身近な人からのレコメンドで、それはそのままソーシャルネットワークでの情報伝搬に置き換えが可能であろうと結びました。



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by mikeneko301 | 2014-09-15 22:22 | 本・音楽・アートなど
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