CAT'S EYE(猫の視点)

旅をするときは、できるだけ一人がいい。車窓越しに見える、見知らぬ風景の先へ先へと気持ちを自由に飛ばすことができるから。

友だちと行くのもいいけど、やっぱり一人もいい。たまたま列車で隣り合わせた老人と、話がはずんで、知らない土地や時間を追体験できることもあるから。

あの時はまだ学生で、何人かの友だちとの旅だったけど、夜行列車の中での夜明けは、私一人だった。タイを縦断する列車の空気は独特な匂いがして、北へと向かっていたせいか、少し寒かった。

デッキの窓から外を眺めると、森のはずれに水田が見えて、そこを牛飼いが白い牛たちを連れて歩いているのが見えた。

やがて、昇り始めた朝日が彼らの背を照らした。もやの向こうに見える東南アジアの森、光る牛たちの毛並み。それは何気ない生活の風景にもかからず、荘厳で美しかった。彼らとともにゆっくりと歩いていく牛飼いが聖人に見えるほどに。

その場に感想を言い合う相手がいないことが、いいこともある。その風景は、静かに心の中にしまわれ、時々取り出しては眺められながら、記憶の中でイデア的な美しさを持ったものへと加工されていくからだ。
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by mikeneko301 | 2013-11-10 22:43 | 記憶
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